秋刀魚
これは、私が中学生だった時の話
母がパートから帰って来て、
冷蔵庫から、解凍してあった秋刀魚を
取り出し、焼いて、大根おろしと
スダチを添えて出してくれた。
その日、休みだった父が
母を叱った。
秋刀魚というものは
2時間位、塩をして、水分を出して
焼かないといけないんだ!
と
確かに、そうかもしれない、
きっと そうなんだろう!
けれど、母だって、遅くまでパート
をしていて、そんな時間ないだろう。
ただ、そんな事言って、険悪な空気に
なるのもイヤだ
それで
「あら!お父さん 秋刀魚はもう海の
塩水に漬かっているのですもの!
塩ふって、置いとかなくても
全然大丈夫なのよ!」
妹も
「この秋刀魚スッゴク美味しいわ
きっと、綺麗な海で獲れたのね!」
父は、しょうがないなぁ と言わんばかりに
苦笑いしていた。
40年以上たった今でも、あの日の
場景が
秋刀魚を焼く度に
よみがえってくる。
父は10年前に亡くなり
母は86になった。
私と妹は今でも大の仲良しだ。
秋刀魚、苦いかしょぱいか
お父さんに逢いたいな。